エヴァンはジュリアの頬を両手で持ち上げて、ジュリアを睨みつけた。

「ジュリア、謝る必要がどこにあるのだい?」
「だって・・・・・・」

 自分が原因なのだから、彼に謝るのは当然のこと。

「エヴァン・・・・・・」
「ジュリアは何も悪くない。だから謝らなくていいんだ」

 それでもジュリアの表情は晴れず、曇らせていた。

「私ね、ジュリアのこともケネスのことも、他のみんなのことも好きなの。カーシーに夢を見せてもらって、記憶を取り戻しても、ギャレットに怒りはあったけれど、どうしても・・・・・・嫌いになれなかった・・・・・・」

 大切な友達を危険に晒しても、憎むことも嫌いになることはできなかった。

「僕はジュリアが笑顔で日々を過ごしているなら、それでいいよ」
「エヴァン・・・・・・」
「まぁ、ギャレット達と一緒に住んでいることを聞かされたときは不安だったけどね」
「そうだよね」

 まさかそのギャレットに毎日口説かれていることをエヴァンに言える訳なかった。

「何かあったら、必ず誰かに相談すること。できるかい?」
「うん。エヴァン、ありがとう」

 優しく笑ったエヴァンと図書館を出て、別々の方向へ向かった。