一瞬、僕が繰り返していたあの六月一日から1年が経っているのかと思ったけど、違う。そうじゃない。

 今日も間違いなく僕が繰り返していた六月一日で間違いはない。間違いはないんだけど……そこにお母さんがいない。それだけだ。

 前回の六月一日でお母さんを殺してしまったから、今回の六月一日ではいなくなってしまったんだ。

 でも、なぜ?

 なぜ、お母さんだけがいなくなっているの?今まで数え切れないほど佐藤や田中、鈴木を殺してきたのに、どうして今回に限ってお母さんだけが……?

 それだけが分からない。

 分からなくて、でも、お母さんがいなくなっていることは事実で、頭がおかしくなりそうだ。


「四季ちゃんはまだ若いし、心の整理がつかないのは分かるわ。だからゆっくりと整理していって――きゃっ?!」


 喋るおばさんを押し退け、僕は靴も履かずに家を飛び出した。

 お母さんがいない事実を聞かされるのもつらかったし、何より、自分の家だけど自分の家じゃないあの場所にいたくなかったから。

 無我夢中で道を走った。歩く人達なんて気にもせず、ただひたすらに、ただがむしゃらに、遠いところに向かって……。