「んじゃ、行って来る。」


本当に行こうとする彼の腕を即座に掴み、

「ちょっと待って!」

そう言うと、彼は不思議そうな顔をして止まる。


「あ、あの。
竜樹くんの想い人って…?」


「だから、目の前にいる人だって。」


それから、竜樹くんは少し屈んで私と目を合わせると



「智璃ちゃんのことが、
好きなんだって。」

彼はそう言って微笑むと、続けて

「これが、洸がニヤけてた理由。」

少し困ったような表情を浮かべた。