みんなが我が家へ帰る。
私もその一人となって帰る。

だけど、入学式のとき隣にいた村木は一人、外で座り込んでいた。
誰も居ないような場所。
まるで、田舎と都会の境のうち、私達は都会、村木は田舎で彷徨うかのように。

―これって、話しかけられる状況かな…?

でも、村木とはまだ会ったばかりで
なんの縁も無い。


「千沙ー!一緒に帰ろーー!」

この声は…

声の主は、予想していた通り、光希だった。

「あ、うん。帰ろっか」

―違う。

もうちょっと待って、と言いたかった。
そして、村木のもとへ駆け寄りたかった。
それはなぜなのか、私にも分からない。


―私は、誰の支えにもなれなくて…
臆病な人間でした。


その後、光希と2人で帰った。

村木はまだ残っている。

私は村木に背中を向け、だんだんと離れていった―