そんな時、前の席に座っていた知らない男の子が声をかけてきた。

「ねぇ、キミ。名前なんていうの?」

「え…」


急にかけられた言葉に、内心は驚いていた。


「さ、沢本千沙ですけど…」

「沢本さん?」

「はい…」

「僕、野々村敦史!よろしくな!
 沢本さんの席は確かこの辺りだよ」

「あ、ありがとう~…」

名前は野々村敦史(ののむらあつし)。
黒い制服に似合うサラッとした黒い髪。
そして何より私より少し背が大きい。
野々村君は私をすごく優しく接してくれた。
自分のことを「僕」と言っていた。
こんな男子、見たことがない。
今までふざけた性格の奴らばかりだったから…


―あなたは、知っていたでしょうか。
私は、あなたに恋をしてしまったこと―