"大倉堅(おおくらけん)"

なぜこの人のことを知っているのか、というと…


さかのぼること、2年前。
小学4年生の3月。

大倉は、隣町(とはいえ私の住む所からほど遠い場所)へ転校した。
そのときのお別れパーティの光景を思い出す。

―……

「大倉、またな」

「大倉、元気にしてろよ」

大倉は休み時間、何人もの男子に囲まれていて、人気者だった。
その大倉がいなくなるわけだから、みんな悲しくないはずはない。

だけど、
だけど…


私は大倉が嫌いだった。
他の誰よりも。


そのきっかけは…
お別れパーティを大倉には内緒でクラスで開く準備をしていたときのこと。
そのときは大倉は好きでも嫌いでもなく、普通だった。


「千沙…こんなこと言うのもあれだけど…」
光希が話しかけてくる。