「千沙ってさぁ~…」

光希との会話での出だしは決まってこれ。
なんで私ばっかなんだよ、って思うな…

「千沙ってさぁ、朝も聞いたけど、ホントに好きな人居ない~?」

―光希もなかなかしつこいなぁ~…

「居ないって、ホント!!」

あえて強く言ってみる。

「そう?話変わるけど、野々村ってなかなかモテそうだよねぇ~!
あれじゃあちょっと狙いにくいんじゃない?!」

「えー…」

信号が赤になった。



―返す言葉が無い。―


こんなとき、どういえばいいんだろう。

“そうだよ、うちらは無理だね~”

“うち、あえて狙ってみようかな?!(笑)”

頭の中はその2つの言葉が回っている。

「千沙~どうしたの?」


―決まった、返す言葉が。

口をわざと大きく開いて、しゃべりだす。