駅伝の学校代表を決めるタイム取りは、男女とも3キロはしるのが、祐也たちが通う中学の決まりだった。

祐也の走り方は、後半追い上げ、さすがに走りなれている前半加速の集団には追いつけないが、中途半端に走っているやつに負ける事はなかった。


走り初めて8分

だいたい2キロくらい走っただろうか。

目の前に美紗が見えて来た。

いつも2キロくらいの所で、美紗を抜いている。
今日も同じように抜こうと少しペースをあげた。

「ねぇ、谷井」

不意に話しかけて来た美紗。
「何!?」

息が辛いせいで自然と口調がキツくなる。

「真美ちゃんの事が好きなんでしょ?」

頭を貫く衝撃。思いを寄せる相手に一番言われたくなかったこと。

「違うぞ!!だいたい今話す事じゃないだろ」

「そっか…。まぁ」

「まぁ?」

「今日は負けないんだから」

「は?」


言い終わるなりペースを上げる美紗。残り500メートル。

「アハハ、負けたよ」