「命に別状はありません。
ですが………」



「なんですか!!
先生!!一磨はどうなんですか!」






「後遺症が残る可能性があります」








誰かの声がした。

薄っすらと目を開けると、真っ白な天井があった。



身体を持ち上げようとすると、頭に鋭い痛みが走る。





「うぅ………!!」





呻き声をあげた俺に気づき、誰かが駆け寄って来た。





「あぁ!!一磨!!
大丈夫か?身体は動くか?」



「先生!一磨が!!」





両親が身体の事を真っ先に聞いてきた。
だが、この時の俺は、自身の事を心配してくれる人が誰なのか、自分は誰なのか分からなかった。

だから、物凄く残酷な事を口にした。









「いやまぁ………
大丈夫です。でも、おじさんとおばさん、誰ですか?」









「………………え?
……いやぁ、冗談は辞めなさい!
それは全く笑えないぞ?」




そう言った父。
でも、俺には分からなかった。



俺と父の話を聞いていた医者が、俺に尋ねた。






「君の名前はなんだい?」



「名前?
えっと……………あれ?思い出せない。
……………なんだっけ?俺の名前」





それを聞いた両親は、泣き崩れた。
医者は残念そうに、言った。











「一磨君は、記憶喪失です」