そしてまた、時は流れる。



今度は五年生になった頃。


棗の、殆どの表情が失われた。
俺は、棗のそばに居なかった。





俺等は変わっていた。




それでも、変わらない事があった。
それは一緒に帰る事。




「はっちゃん、帰ろうぜ」

「(コクン、コクン)」




この時の棗は、表情どころか、声も出さなかった。





「かずくん。
もう、歳も歳だしさ、一緒に帰るの………………辞めない?」



「………え?」




突然の事に、びっくりした俺。

無表情ながらも、泣きそうな棗。




「…え?なんで?
喧嘩した時だって、一緒に帰ってたじゃん!なんで、今更そんな事いうんだよ!!やめろよ!

そんな冗談…冗談に聞こえねぇよ……」




「一磨。冗談じゃ無いよ。
一磨も、私と帰るのが恥ずかしいでしょ?だから、明日から別に帰ろう?じゃあ帰るね。バイバイ」






俺は泣きながら、棗を見た。
走り去る棗の涙が、一瞬見えた気がした。



だから、おかしいと思った。
この時の俺も。

なんで、『もう一緒に帰るの辞めよう』と言った張本人が、泣いているのか。疑問に思った。