ベッドの掛け布団を掴み、ヒナタにかけてやった。

「そんなに女とやりたきゃ風俗でも行ってろよ!」

俺は引き出しから、しまってあった10万円を取り出し、ショウマに投げつけた。

「お、俺はヒナタちゃんを愛してる!」
ショウマは俺の胸ぐらを掴んで叫んだ。

「だから、ヒナタちゃんを俺に譲ってくれ」

「ふざけんなっ! 」

俺はまたもう1発ショウマを殴ろうとしたが、その腕を掴まれた。

「譲るって物じゃねーんだぞ」

「お前は何でも持ってるだろ。
頭良くて、金持ちで、イケメンで」

「お前はヒナタの気持ちなんてちっとも考えてねんだな。最低だよ」

「じゃあ、お前はどうなんだよ。
ヒナタちゃんの気持ち考えたことあるのかよ」

「お前みたいに強姦しようとした犯罪者にとやかく言われたくない!
お前は今日から友達でもなんでもない。出てけ!」

「あぁ、そうだよ。
お前は最初から俺のこと友達だなんて思ってなかった。
お前の家族のことも、中学の時の思い出話も、俺はなんにも知らねー。
お前は決して俺に心を許さなかった。
心の中で俺を見下してたんだ。」

「お願いだ。もうお前の顔は見たくない。出てってくれ」

ショウマの言ってることは、正しかった。

俺は自分から誰かに心を許したことはない。
それは、一人で生きてきた俺の防御策だ。
お前なんかに何がわかる。
俺の持ち物すべてをただ羨ましがって、勝手に憧れているだけのお前なんかに愛など語ってほしくもない。

人の心は力ずくでは手に入らない。
かつて俺が母さんに愛して貰えなかったように。

ショウマを見てると昔の自分を思い出す。
ただがむしゃらに母さんに愛されたかった自分。