「、、、、やめて!」
かなり聞き取り辛かったが、確かにやめてと叫んだようだった。
俺は一瞬にして頭に血が上って、目の前のドアを力いっぱい開けた。
そこには、ヒナタをベッドに押し倒して覆い被さっているショウマがいた。
見ると、左手はヒナタの口を塞ぐように押しつけていた。
右手はヒナタの白いワンピースを脱がそうとまさぐっていた。
俺は、とっさにショウマに飛びかかると、夢中で殴った。
殴って殴って殴りまくった。
ヒナタが止めなければ殺していたと思う。
「ケンちゃんやめて! 死んじゃうよ!」
俺はその声で我にかえると、一気に力が抜けてそのばにへたりこんだ。
すすり泣きが部屋に響いた。
見上げると、それは顔中血だらけになったショウマのものだった。
「、、、、お前何やってんだよ」
「お前になんか、俺の気持ちはわからねーよ」
「わかんねーな。お前のやってることは家畜以下だよ」
ヒナタのワンピースは、胸のボタンが2つ引きちぎられて無くなっていた。
その箇所を右手ではだけないようにおさえていた。
ヒナタの腕や顔にはかろうじて、傷などはなかった。
震えてはいなかったが、目には涙が溜まっていた。
どんなに怖かっただろうか。
俺はそっと近づいていった。
「見ないで」
ヒナタはとても痛々しかった。
その時初めて、このコを守りたいと強く思った。
思えば、俺の人生には守りたい人などいたことはなかった。
俺の信頼する人は、いつも俺を裏切った。
幸せというモノはいつも俺の手のひらから砂のようにこぼれ落ちていった。
そしてヒナタは、そんな俺の手のひらに残った小さな砂金だ。