こうやってじっくりと見ると、年齢は俺よりも少し上かもしれなかった。
髪は肩甲骨下あたりまであって、今時珍しく割と黒い髪だ。
でも、元々あまり色素の濃い体質じゃないみたいで、光が当たると薄く茶色く見える。
本当に色が白くて、目は驚くほど大きくて透き通っている。
まつげもびっしりと生えていて、くるっとカールしていた。まるで人形みたいだなと俺は思った。

彼女の胸元にも汗がじわっとにじんでいた。

「あのさ、よく分かんないんだけど、俺を探してるって言ったよね?」
「はい、、、、。あなたを探すように言われて、、、。」
「誰に?」
「、、、、、お父さんです。」
「君の?」
「はい、、、。そうです。」
「探してどうしろって?」
「いえ、私、、、、、もう帰るとこがなくなってしまったんです。」
「どういう意味?」
「お父さんが死んでしまって、私は帰るとこが無くなりました。それで、お父さんが死ぬときにアナタを探すように、言ったので。」
「いや、意味がよくわかんないな。なんで君のお父さんは俺を探せって言ったの?」
「それは、私にも、、、よくわかりません。」
「俺の知り合いなの?」
「それは、私は知りません。」
「それじゃ、君の父さんの名前は?」
「それは言ってはいけないと言われています。」

その言葉を聞いて、ますますこの子は一体何者なのかという疑問が大きくなった。
なにか危ないことに巻き込まれようとしてるんじゃないのか。

店員が真っ赤なクランベリージュースを机に置いた。
彼女はそれをカランカランとストローで何回かかき回せて、一口飲んだ。

「俺の名前はお父さんから聞いたの?」
「はい。小池ケンジ。」
「なんでケンちゃんなの?」
「アナタがケンちゃんだからです。」
「それは誰が、教えてくれたの?俺のニックネーム。」
「、、、、、、、。多分お父さんです。」
「多分?」
「あの、私を預かってくれますか?」
「預かる?」
「はい。もう帰るとこがありません。私を預かってください。」
「あ、預かるって、物じゃないんだから、君他に親戚いないの?」
「私、お父さん以外知りません。とにかくお願いします。」