こんなにも土曜日が待ち遠しいものだとは、久しく感じることはなかった。

俺にとって自宅も学校も、いやそれ以外の場所どこでだって安らぎを感じるところはなかった。
だから土曜日や日曜日や休日なんて、俺にとってはどうでもいい存在だった。

ヒナタが俺を待っていてくれる。
ヒナタが料理を作ってくれる。
ただそれだけのことが、こんなにも当たり前に楽しみになっていた。
今週はどこに行こうか、そう考えるだけで、ワクワク出来た。

「ケンちゃん、買い物行こ」

「またぁ?毎日行かないで、冷蔵庫大きいんだから3日に一回行けばいいのに」

「いいの。買い物が好きなんだもん」

笑いながら玄関に走っていくと、ヒナタは鮮やかな黄色のサンダルを履いた。

ヒナタがスーパーが好きな理由が最近俺も分かるようになってきた。
スーパーは毎日置いてある商品と値段が微妙に変わる。
ヒナタはそれらをなるべく安い時に安いものを買うのが好きなのだ。

今まで俺はそんなこと気にしたことがなかったが、そういうことを気にして買い物していると、まるでゲーム感覚だ。

世間の主婦が今日の『お買い得品』をこぞって買ってくのは、ゲームの『レアアイテム』出現みたいなものだったのかと、納得した。

要るか要らないかわからないが、とりあえず『レア』だから取っとけ、みたいなことだ。
本当はたいして『レア』ではないのだが。
結局それで山ほど『お買い得品』を買ってしまうのだ。


案の定、俺たちも『お買い得品』を山ほど買って商店街を歩いていた。

今日のヒナタは夏らしい。
白のTシャツにピンクのスカート、そしてお気に入りの黄色いサンダルを履いていた。

ヒナタには夏が似合う。
白い肌に鮮やかなビタミンカラーがはえた。

「あ、そうだ。お花買っていこう」

ヒナタが花屋にかけていった。

しばらくすると手にチューリップを抱えて出てきた。