俺は常に学年上位の成績をキープしていて、恐らく養父母は相当な寄付金を寄付しているから、先生からもあまり厳しく注意されることがなかった。
大半のクラスメイトはそんな俺を奇怪な存在と気持ち悪がっていたに違いない。
そして残った少数は、思春期にありがちな、履き違えた『自由への憧れ』の対象として、俺のことを見ていた。

要するに、とにかく俺は学校で浮いていた。

「別に、体調が悪かっただけだよ」

「ほんとかよ~」
ショウマはにやにや気持ち悪い笑みを浮かべて俺の耳元に近づいてきた。

「こないだ見たぜ。すんげ~美人と渋谷歩いてただろ?」
俺はすぐヒナタのことだと直感した。

「そうだったかな。覚えてねぇよ」

「いいよな~。あんな美人、俺だったら一生忘れられないけどなぁ~。
モテる男はちげぇよな」

こいつはいつも、理想のケンジ像を俺に押し付けて、意味もなく羨ましがる。

こんなムサい男子校で、俺がいつモテてた時があるのか聞き返してやりたいが、それはそれで面倒くさいから、ただいつも受け流しておく。

「なぁ、覚えてんだろ?本当は。まさか彼女じゃねーだろ?」

悪いやつじゃないが、こいつは放っとくといくらでもあることないこと言って回る困ったくんだ。
要は俺を話題にクラスメイトの気をひきたいだけだろう。
ちっせぇ男だ。
このまま放っとくとヒナタが俺の『すんげ~美人な彼女』になりかねない。

「しつけーなぁ。
親戚の子だよ。
あんま変なこと言って回んじゃねーぞ」

「やっぱり覚えてんじゃん。なぁ、あのコ紹介してくんね?」

「やだよ。お前みてーなのに紹介したらなにされるかわかんねーし」

「ひでぇなぁ。俺たちキョウダイだろ?」
俺がいつお前のアニキになったんだよ?と言い返す代わりに、ショウマを思いっきり睨んでやった。

「ちっつまんねぇのー」