俺は医学部なんか行きたくないし、行くと言った覚えもない。
だが、医学部に行かないのなら俺を引き取った意味なんかないのだろう。
俺の意見なんて聞かれたことはない。
要は俺は金で病院の跡取りとして買われたようなもんだろう。

「そうなの?やっぱり一人だと体調管理が大変でしょう」

「いえ、一人の方が勉強に集中出来ますし、最近自炊も始めましたから」

「あら、それはすごいわねぇ」

「はい。なんとか一人で自立した生活を送ってみたいんです。
これからはちゃんと学校に通いますから、お願いします」

「わかったわ。
ケンジくんがそこまで自分の意見言うなんて初めてよね。
それじゃしばらく様子見ましょうか」
母さんはそういって電話を切った。

顔を上げるとヒナタが入り口に立って、心配そうな顔で見下ろしていた。

「誰と話してたの?」

「母さんと」

「なんかずいぶん大きな声だったから。びっくりして」

「そっか。、、、学校に行ってないのがバレた。」

「学校?ケンちゃん学校に通ってるの?」

「うん。本当はね」

「どうして行かないの?」

「くだらないから」

「くだらないなら入らなければ良かったのに」

「俺だって入りたくて入ったわけじゃねぇし」

「どうして入りたくないのに入ったの?」

「どうしてだろうな。俺にもよくわからない。別にほかにやりたいこともなかったし」

「なんか羨ましいな」

「何が?」

「うん。学校に通いたかったの、私も」

「学校通ったことないの?」