「うん。得意。お父さんも得意だった。」

「そっか。遺伝だな。じゃ次はクレーンゲームやりに行こうぜ。俺得意なんだ」
俺たちは1階に降りていった。

「入ってる人形をクレーンで掴んで取るゲームだよ」

「やりたい!」

ヒナタは慎重にやり始めた。
さすがのヒナタも最初は難しそうだった。
クレーンが降りて、ぬいぐるみをくしゃっと掴んで、ゆらゆらと上に上がっていく。

「あのコ、掴まれて痛くないのかな」

「ぬいぐるみが痛いわけねーだろ。人形なんだから」

なんだか可愛い質問だったから、俺は笑顔になった。

「人形は痛みを感じないんだよね。なんでだろう、、、」

それに引き換え、ヒナタは真剣な顔をしていた。

「なんでって、人形は生きてないからだろ」

「そっかぁ。、、、、生きてるってどういうことなんだろうね。
人間は生きてて、脈があって、脳があって、脈も脳も心臓もないモノは生きていない。
そういうことなんだよね?」

ヒナタは何故か泣きそうな顔をしていた。
ヒナタは自分の父親のことを思い出しているのかもしれなかった。

ガタンとぬいぐるみが取り出し口に落ちてきた。
可愛いキャラクターのぬいぐるみを取り出すと、ヒナタはにこっと笑顔を見せた。

「なんかお腹空いたなぁ」

「ケンちゃんはおうちでご飯作らないよね?どうして?」

「道具もないし、料理出来ないから」

「ケンちゃん、私作ってあげよっか?」

「料理出来るの?」

「もちろん。女の子だよ?」

「だって、ガスコンロも見たこと無かったんだろ?」

「それはそうだけど、使い方聞いたし、こないだ一緒に本屋に行ったときに、料理の作り方覚えたから。
出来ると思う。」

「立ち読みしただけだろ?怖えーなぁ。
でも、たまにはいっか。俺が教えてやるよ。」

「だって、出来ないんでしょ?」

「多分ヒナタよりはマシだよ」

俺たちは笑い合った。
帰りにヒナタがプリクラをやりたいと言ったので、1枚だけ撮って帰った。