「ケンちゃん、これ説明書ないの?」

「あぁ、確かあったと思うよ。
スタートパック自販機の近くに置いてあるんじゃねーかな」

ヒナタはたたたっと走って説明書を持ってきた。

「これ、やってみていい?」

「あ、うん。初心者用のチュートリアルあるからやってみ」

ヒナタがゲームをやり始めて、ちょっと驚いた。
説明書を短時間で頭に入れていたようで、かなりスムーズにゲームを進めていた。

やっぱりヒナタはゲームが恐ろしく得意だ。
ゲーム機から出てくる青白い光を顔一面に受けて、真剣な眼差しで鮮やかにタッチパネルを操るヒナタは、どこか機械的で、美しかった。

俺はしばらく、そんなヒナタに見とれていた。

「じっと見ないで、恥ずかしいから。」
ヒナタは顔をこちらに向けずに言った。

とっさに俺は、自分のゲーム機に目を戻した。

「見てねーよ」

「うそ」

「意外と自信過剰なんだな」

「自信過剰て、あまり良い言葉じゃないよね?」

「誉めてやったんだよ。」

「ヒドイ。悪口言ったんだ。私だってそれくらいわかるもん。」
ヒナタは頬をぷくっと膨らせて見せた。

「ヒナタ、ゲーム得意なんだなぁ。知らなかったよ。」