麻衣子の靴が隠されたことがあった。いつも浅倉愁をとりまく男の子達の仕業であった。しかし、この時ばかりは浅倉愁は関与していなかったのだが、

(せんせーっ!まいちゃんのおくつがなーい!)
(しゅうちゃんだよ、きっと!しゅうちゃん、いっつもまいちゃんいじめてるもんねっ!)
(愁くんが…?困ったわね…)



その時、浅倉愁は真っ先に靴を隠した男の子達の所へ行くや否や、
(かえせよ。)
と言って、靴を取り返した。本来ならば仲間にもかかわらず、だ。もちろん、浅倉愁は自分への疑いを晴らすためだけにやったことかも知れない。しかし、なくなったはずの自分の靴を探しだして、いきなり目の前に
(ほらよ。)
と差し出してきた浅倉愁は、きっと麻衣子にとってヒーローの様に思えたに違いない。

その瞬間から、浅倉愁に対する麻衣子の眼差しが変わることになる。



三人は同じ小学校に上がることができ、浅倉愁にちょっかいを出された麻衣子を成海がなだめる、という関係は変わらなかった。