はじめまして。
私の名前は、星野 桜(ホシノサクラ)。
これから書くのは、私が中学3年生の時に経験した物語です。
読んで気持ちのいい話ではないと思います。
でも、大切な命のことを考えるきっかけになればと思います。
では。
「ひまだなぁ・・・」
進級すれば、中学3年生になる春休み。
私、星野 桜は、ケータイをいじっていた。
春休みの宿題なんて、やる気が出ない。
まぁ、しなきゃいけないんだけど。
友達は、みーんな塾の春期講習や部活で大忙し。
こんな時は、部活に熱心でない顧問が少し恨めしくなる。
みんなが忙しいときに暇を持て余すというのは、嬉しいけど、やっぱりどこか悲しい。
あぁ、暇だ。
退屈だ。
なにか・・・したいな。
と、ケータイが振動した。
「メール・・・誰からだろ」
ボックスを開いて、思わず笑みがこぼれた。
『坂本 優哉』
付き合っている彼氏からだ。
あっちからメールしてくるなんて、めずらしい。
「なんだろ・・・?」
件名は、『今部活終わった。だるい』
あいかわらず、変な件名が好きだなあ。
変な優哉。
でも、格好いい優哉。
『さくら、今度の日曜あいてる?』
『あいてるよー(´∀`*)』
速攻返信。
好きだから、ね。
『どーして??』
『デートでも行く??笑』
冗談交じりに返してやった。
最近は、優哉の所属するテニス部の練習が忙しくて、全然デートもしてない。
受験生直前なんだから、もっと遊びたいのに。
優哉の返信も早かった。
『いや』と件名。
『俺の家来ないか?』
「・・・・・・!」
びっくりした。
これって・・・その・・・
そういう意味だよね?
中学3年生になるんだ。
もう、異性の家に行く意味くらい分かる。
それに・・・
優哉は、男子たちの中でも『そういうこと』についての知識が半端じゃないという噂だった。
ついたあだ名は、『1の5のエロ王子』。
1年5組から2年1組に進級してからも、このあだ名はなぜか健在だった。
教科書の単語にすら忍び笑いを漏らすというバカさ加減にはあきれたけれど、中学生男子らしいといえばらしいところだ。
余談だが、「王子」と呼ばれている理由に関しては、いろいろ説がある。
テニスをしているときのドヤ顔が王子っぽいからとか。
顔はそこそこのはずなのに、なぜか女にもてるかとか。
優哉自身は、このあだ名をあまり気にいってなかったみたいだけど、結構似合ってる。
そんな優哉と付き合ってるんだから・・・
いつか・・・こんな日が来るんじゃないかなとは思ってた。
だけど・・・
私は、わりとオトナっぽい顔立ちをしている。
背も高めだし、高校生くらいに間違えられることも多い。
だからだろうか、
『星野って絶対処女じゃねぇよな』
『ヤッてるだろ、あれは』
『処女膜破れてんだろ』
『ビッチって星野みたいなヤツのこというんだよな』
『あー、やっぱヤるなら処女だよな』
『星野はマジないわ』
男子たちから、そんな言葉を投げられることも多かった。
でも、優哉はそうじゃなかった。
私を大切にしてくれた。
だから、好きだった。
・・・大丈夫。
優哉なら、きっと大丈夫。
それに、優哉に嫌われたくないという気持ちも少しあった。