暖かい風が吹き始める季節になった。
私は3年になった。あれから貝原との会話は増えていき、日に日にメールの回数も増えていった。そんなある夜貝原からメールがきた。
「元気?」
いつも会ってるじゃないかと思いつつメールを返した。
「元気だよ!」
すると、1分もしないうちにまた
「そうか!あのさ、話したい事あるんだけど」
ときたので部活の話かと思い、
「何?」
と返すとそこから1時間メールは返ってこなかった。もう寝ようかと思い出した頃、私の携帯が鳴った。貝原からだった。メールを開いた。
「なんかいきなりこんな事言うのも変なんだけど、俺小山が好きなんだ。付き合ってくれませんか?」
という内容だった。頭がフリーズした。あの貝原が私のことを?とか、いろいろ考えて、返事どうしようと思い、考えついたのが、
「もうすぐテストだから、返事テスト終わってからでいい?」
という逃げ方だった。
「分かった。」
と書いてあった。困った事になった。解決策を考えながら、眠りについた。


あれから2週間が過ぎ、言い訳のテストも終わってしまった。私は真菜とカフェにいた。
「実衣まだ返事してないのー?」
「…うん」
真菜が机を叩いた。
「付き合いたいの?付き合いたくないの?どっち⁉︎」
すごい形相だ。
「貝原はいいやつだし、かっこいいとは思うよ。でも付き合うとかよく考えたことないし…」
真菜が腕を組んで、こっちを見る。
「付き合ってみたら?」
「は?」
「だって付き合ってみたら変わるかもしれないじゃん」
とまた大変な事を言い出した。
「そんな事できるわけないじゃん」
と反論すると
「じゃぁ断れ」
と言われる始末。正直私自身も自分の気持ちが分からない。貝原の事を好きなんだろうか。
「実衣!聞いてんの⁉︎」
「はい?何?」
「今から貝原に電話しろ」
「へ?」
「返事しなさい」
「何で今?」
と聞き返すと真菜は
「あんたねーテスト終わってからとか言って何日放置してんのよ、貝原が可哀想でしょ!」
と般若のような顔で言うから恐ろしくてメニューで顔を隠した。しかし真菜は私からメニューを剥ぎ取り
「携帯貸しなさい」
と言う。真菜は怒りだしたら止まらない。だからおとなしく携帯を差し出した。すると真菜は携帯のアドレス帳から貝原の電話番号を出し、かけ始めた。
「え⁉︎ちょっと!」
「いい加減返事しなさい」
と睨まれ仕方なく貝原にかかっている携帯を耳に当てる。何回目かのコールの後貝原の声が聞こえた。
「…もしもし?」
「あー私だけど…」
「うん、どうした?」
貝原はどことなく緊張しているようだった。
「この前の返事なんだけど…」
「…うん」
チラッと真菜を見るて早く言えと睨んでくる。
「私貝原の事そんな風に思った事ないから…」
と言うと
「…じゃぁさ…お試しは?」
と思ってもみない事を言い出した貝原にビックリして
「へ⁉︎」
と変な声が出てしまった。
「いや、少し付き合ってみたら変わるかもしんないじゃん。 ダメか?」
と聞いてくる。お試しって、漫画の中の話だと思っていた。
「一ヶ月だけでいいから」
と静かな声で話す貝原。
「…うん」
と、返事をしてしまった。正直嫌ではなかった。貝原の事をかっこいいと思った事もあったし、ドキッとした時もあった。だから、一緒にいたら好きになるような気がした。
「本当にか?」
と貝原が聞く。
「うん、いいよ」
と答えると、
「やった!ありがとうな小山」
と嬉しそうな声が聞こえてくる。
しばらくしてから電話を切ると、真菜が
「どうなったの?」
と聞いてくる。
「なんか、お試しで付き合う事になった」
と答えると、真菜が
「貝原ファイト!」
と意味の分からない事を言い出した。
それから私と貝原はお試しではあるが、付き合う事になった。

お試しな付き合いが始まってから、一ヶ月が過ぎた。あれから貝原とは一緒に帰ったり、デートをしたりした。貝原は優しくて、正直私は好きになりかけていた。一ヶ月が過ぎた夜貝原からメールがきた。
「気持ち聞かせてくれる?」
私の心は決まっていた。
「うん、私も多分貝原の事好きなんだと思う」
と曖昧な返事を返すと、
「本当に?俺と付き合ってくれるって事?」
私はきっと貝原が好きだ。貝原となら楽しく過ごせると思った。
「うん」
と短い返事を返した。そして私たちは付き合う事になった。