「わかった。では、今から帰る」
『お待ち下さい。私共が迎えに参ります』
「いや………今日は、飛びたい気分なんだ」
『左様でございますか。では、お待ちしております』
――――ピッ
もっていた電話をベッドに放り投げると、小さな埃がキラキラと舞った。
ただ電話をしただけで、かなりの体力を使ったような気がする。
もういかなきゃな……。
ダラダラしている自分の体に鞭を打ちながら、パーティーの用意を始めた。
部屋の角にある、本当に小さなクローゼットから漆黒のスーツを。
そして、胸のポケットにはこの瞳のように深紅の薔薇をさした。
そして、奇妙な光を放つ鏡の前に一歩踏み出して唱えた。
「Il ouvre et est un miroir.」