一気に真面目な顔つきに戻った楓は、私の手を握ってこう言った。
「…今、屋上に颯太君がいる。竹宮はいない。今しかないと思うの。颯太君とちゃんと話してきて。」
それを聞いて私の目は不安げに揺れる。
…む、無理だよ。
…でも、いましかチャンスはない。
私の中では、そんな言葉がぐるぐると回っていた。
楓は、握っていた手をゆっくりと離して、どうしようかと固まる私の背中を押した。
「結菜……頑張って。」
その言葉が後押しとなって、私の足を屋上へと向かわせる。
「あんたの気持ちもぶちまけてきな。」
独り言のように呟いた楓の声も、ちゃんと届いていた。