目の前にある、大好きな大好きな颯太の背中が、だんだんと歪んで見えなくなる。


颯太が廊下の先を曲がって見えなくなった途端に、私の涙腺は崩壊した。


しゃがみ込んで、必死に涙を堪える。


そのとき、今最も聞きたくない声が後ろから響いた。



「はははっ!やっと分かった?風間くんはもう、あんたのところには戻らないんだって!!あっはは。いいもの見ちゃった!じゃーね!私は、風間くんのところに行くから!!」



一気にまくし立てて、走っていった紗江ちゃんを、私はただただ呆然と見ていた。



『…そんなの……わか…ってるよ…。もぅ、もぅ颯太が、私のとこに戻らないのなんて……言われなくても、わかってるよ………。』


私の声は、誰もいない廊下に消えていった。

私はそのまま、壁に寄りかかるようにして泣き崩れた。