待たされる時間を無駄にしないようにか、スタートの位置で軽くストレッチを始めた颯太。

ぴょんぴょんとはねたり、ぐぐっと伸びをしたりしている颯太は…やっぱり爽やかでかっこよかった。


私がずっと颯太を見ているのに気付いたのか、楓が言いにくそうに声をかけてきた。


「あ…のさ。結菜って、颯太君のこと、まだ……」


楓の伺うような口ぶりに、苦笑いがこぼれた。


やっぱ、別れたのに好きとか、あれだよね。

私だって…さっぱり忘れるつもりだったから。


『あはは。困っちゃうよね。自分でもわかんないんだけど…。勝手に目が追っちゃうの。どれだけ人がいたって、1番最初に颯太を見つけちゃうんだ。…無意識に探してるんだよ。

…それってやっぱり、好き…ってことだよね。』


私は、楓に笑ってみせた。

でも多分それは、困ったような…無理矢理笑ってる。みたいな笑顔だったと思う。