下に降りると、そこには見慣れない黒い車が停まっていた。
「遅い」
黒い車の窓がゆっくりと開き、そこから星野さんが覗いている。
「ごめんなさい…おはようございます」
「ん、乗って」
自動でドアが開き、あたしはサッと乗り込む。
「…顔色良いな。よく眠れたのか?」
発車して数分後、沈黙を破るようにミラー越しに星野さんがそう言った。
「はい、緊張していたわりにはすぐ眠れて…」
「良いことだ」
星野さんが少しだけ、微笑んだ気がした。
…初めて見る顔。
「何をにやけている」
「いやっ!あの…その、星野さんも笑うんだな〜って!」
「俺だって人間だぞ」
無表情に戻った星野さんがそう言った。
うぅ…気まずい。
少し険悪な雰囲気の中、現場に到着した。