クランクイン当日の朝。
昨夜は緊張していたわりにはすぐ眠れて、体調は万全。
安藤さんとは…
あの日、冷たく突き放されて以来の再会になる。
プルルル…
丁度支度を終えた頃、あたしの携帯電話が鳴り響いた。
「もしもし」
「陽奈、起きてたか?」
「あ…はい、そろそろ外に出ようと思っていたところです」
電話の相手はマネージャーの星野さんだった。
あたしのマネージメントをしてくれると決まった日に連絡先の交換をしたが、これが初めての連絡だった。
そして星野さん…陽奈なんて呼んでたっけ?
…今はそんなこと考えてる暇ないけど。
「マンションの下に車停めてるから。早く降りてこい」
「へ?あたしのですか?」
「そこ以外に停めてどうする。…早く降りて来なさい」
「は、はい…」
返事を言い終わる前に電話は切られてしまった。
「…いってきまーす」
時刻は午前5時。
家族がまだ眠っている中、あたしはそっと家を出た。