顔合わせの翌日からは再びレッスンが始まった。
「はぁ…疲れたなあ」
今は休憩中のため、あたしは1人ロビーのソファに腰をかけている。
缶のココアをゆっくり飲んでいると、隣に人の気配を感じた。
「あ…安藤さん。お疲れ様です」
確認してみるとあたしの隣に安藤さんが座っていたため、失礼に当たらないように立ち上がって挨拶をした。
「えっと…」
「あ、木下陽奈です。今度映画で共演させていただ…」
「ん、自己紹介聞いてたから」
あたしの言葉を遮り、突き放すようにそう言ってくる安藤さん。
「あ、すみません。…よろしくお願いします」
軽く微笑んでそう言うと、安藤さんは
「こちらこそ」
と、ぼそりとつぶやき去って行った。
あたしと話している間、彼は一瞬たりとも笑顔を見せなかった。
あたしが知っている『drops』の安藤遥斗は、見る人全てを魅了するような笑顔で歌う姿。
でも、さっきあたしの目の前にいた安藤遥斗は全然そんなことなくて。
「…いきなり馴れ馴れしすぎたかな」
あたしにとって、初めて会った芸能人。
ミーハー心を出しすぎてたかも、と思い、1人反省した。