土方さんはなんというか、美形だ。
壬生浪士組....、いや新選組は基本美形ぞろいだと思う。




沖田さんは中性的な美しさがあるし、斎藤さんは憂いを帯びたような美しさがあるし、藤堂さんは他の方に比べて少年らしさが残るが極たまに男らしさがでる。

そして、鬼の副長土方さんは役者のような美しさときた。




一定の距離を保っていればなんともないが、こうも長時間(そんなに時間たってないが)接近されて平静を保てるほど私は男の人に慣れていない....。

それに美形なら尚更だ。




どうにかしてこの状況から脱したいのだが。




なんて考えていれば、その手はあっさり離された。




――な、なんだったのかしら。




私の手を離した土方さんは棚の中を漁り出した。ガタゴトと、けたたましい音をしばらく聞いていれば何かを見つけたようで音が止む。




「お、あったな」




しかし土方さんの手に収まっているそれはしばらく手をつけていない様でほこりまみれだ。




あれ....どうするのだろうか、とぼんやりしている私の目の前に、土方さんはそれを見せた。




「効き目は落ちてねぇハズだ、やる」




「え...」




まずこれは何なのだろうか、ひくつく私を見て心情を察した土方さんは袖でゴシゴシと表面をこする。




「おら、汚くねぇぞ」




「はぁ....」




とりあえず受け取ってみたがほこりが取れれば綺麗な小さい壺だった。




「開けてみろ」と言わんばかりの視線を向けられたので恐る恐る蓋を取れば、




「軟膏....!!!」




手荒れによく効く、軟膏がおさまっていた。




ガバッと土方さんを見上げれば気まずそうにそっぽを向く。




「その....雑用で酷使しちまったみてぇだな、その手痛いだろ」




「........」




土方さんが、謝った。

私の文すら捨てた土方さんが。
申し訳なさそうに謝っている。




心底驚いたような顔をしていれば、気にさわったのかまた顔がしかめられる。




「なんだてめぇ、俺がこんなことしちゃ悪いか」




「えっ、あっ、そんなことないです!ありがとうございます!」



慌ててお礼を言えばまだ不服なのかブツブツと文句を垂れながら茶菓子に手をつけた。




「土方さんって本当はいい方なんですね」




「あ?」




思わず口に出てしまった言葉に口を抑える。褒めたのにどんどん鬼のような形相に戻ってしまう。

褒めたのに、褒めたのに。




「てことは今までどう思ってたんだ」




「悪代官」




「てめぇ!!!」




「ピギャッ」




これはまずい、私は土方さんに対する警戒心が薄れてしまったせいです、まるで沖田さんのように憎まれ口を叩いてしまう。




土方さんが片膝立てて怒り出したので私は情けない声を出してしまった。