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その日の夜、土方の部屋に一人の訪問者がいた。




「で、話って何だよ斎藤」




難しい顔をした斎藤に土方は首をひねる、
用はいつも簡潔に済ませるのがこの男だが今日はなにやら様子が違う。




「土方さん....、いえ、副長
今日は失礼ながらお聞きしたいことがありまして」




「聞きたいこと?」




「はい、長尾伊勢についてです」




その名を出せば土方は頭をガシガシとかく。

どうやら何が言いたいのか分かったらしい。




「あいつのことは....
俺に任せろって言っただろ?」




面倒くさそうに言い放つ土方に斎藤は俯いた。




「しかし....あの者に甘味処の主人と会わせてやると言って数ヶ月経ちます故、痺れを切らしているかと」




言いづらそうに発言する斎藤を見て土方はため息をついた。




大抵、斎藤は土方に反論せず
何でもこなす男だ。

しかし、伊勢が来てからというもの伊勢が絡む話になるとやけに意見を出す。




――もしかしてこいつ....。




そう思ったが聞けず。




「だがなぁ....会わせるったって万が一あいつを奪われたらどうする」




「そのことなのですが」




「なんだ」




「いえ....勝手な見解なのですが
俺にはあの者の口は軽くないように見えます」




――つまり、斎藤はここから出せって言いてぇのか。




どうしたもんかと頭を抱える土方。
伊勢に見られている事が事だけに野放しにするのは正直難しい。




それに、




「あいつ....家事では使えるんだよなぁ....」




なんてことをぽろりと言ってしまい、斎藤に驚かれた。




「副長が....褒めるなど....」




「おい、何げに失礼だぞ斎藤」