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「夕餉の支度できました」




「ああ....もう部屋に戻れ」




「........」




あれから何日経っただろうか、
初めは量の多さに戸惑った食事の用意も洗濯も日を追うごとに慣れてきた。




あれほど憎かった壬生浪士組の方たちにも今では興味すらわかず、普通に接している。




今日もいつものように土方さんの元へ夕餉の支度を終えたことを告げに来た。
いつもなら、すぐに部屋に戻り食事を摂るが。




「....なんだ、もう用は済んだだろ」




「あの、」




どうしても聞きたいことがひとつあった。




「言いたいことがあるなら簡潔に言え」




「文は、届けていただけたかと思いまして」




「あれか」




文というのは、私が甘味処の主人に宛てて書いたものだ。

この状況が覆せない限り甘味処へ戻ることは不可能だろう。余計な心配をさせない様にせめて報告をしようと文を土方さんに託しておいた。




「なかなか返事が届かないので何かあったのかと....」




しかし、文を出したのは十日ほど前
同じ京内だというのにこの遅さは異常だ。




もしものことを想定して聞いてみれば、土方さんの口からとんでもない言葉が飛び出る。




「捨てた」




「なッ!!」




「俺が律儀に文を届けるとでも思ったのか?

てめぇを信用できねぇのにそんな真似できるか」




もし情報を漏らされたら困ると考えるのは正しい、だが捨てる必要はないだろう。




「なら、土方さんが伝えてきてくださればいいではありませんか!

主人は私が居なくなって一人で切り盛りしているんです!」




二人でも大変だったというのに一人だなんてどれ程キツいことか。
常連客がいるからまだ大丈夫かもしれないがそれも時間の問題だ。




「不逞浪士がうろついているというのに....!」




「うるせぇ!とっとと部屋に戻れ!耳障りだ!」




「ッ....」




これ以上反論すれば、主人に怒りの矛先が向くかもしれない。それだけは避けたくて私は仕方なく土方さんの部屋を出た。