「国って....
幕府から...芹沢さんを殺せと命が?」




「うん」




信じられなかった。
壬生浪士組のは「壬生の狼」と呼ばれることが多いが、その他に「幕府の犬」と呼ばれることがある。




「幕府の犬」と呼ぶのは大抵、壬生浪士組を気に入らない者達が皮肉を込めて呼ぶもの。




犬、だけに忠誠心が強く幕府のために尽くしていることを意味する。




「だからね、伊勢ちゃんは僕達が独断で芹沢さんに手を下したと思ってるんだろうけど、僕達はただ

命令されたから斬っただけだよ」




さも当然のように言いのけた沖田さんに、鳥肌が立った。一人殺してしまえば二人も三人も同じという考えなのだろうか。




命令とあれば死傷など気にしない。




この戦乱の世では私の考えなど少数派なのだろう。説き伏せたところで鼻で笑われて終い。




「殺す必要なんてないじゃありませんか、命を絶たずとも剣の道を断つ事だってできるでしょう?!」




けれどそれを「仕方のないこと」と、
自分の考えを抑え込んでいたらきっとおかしくなる。




半ば叫びながら発した言葉に、
今度は土方さんが反応した。




「てめぇは誰も殺さなきゃいいと思ってんのか?........甘ぇな
そんなもんは綺麗事だこの世の中じゃ通用しねぇよ」




「綺麗事....?」




「ああ、綺麗事だ」