斎藤は腕を組み、芹沢の亡骸を見つめる。




「俺にはなかなか難しい問題だ」




その答えに沖田はクスクスと笑った。
どこかで想像していた通りに返ってきたのでツボに入ったのだろう。




再び伊勢に視線を移せば苦しそうに眉を寄せている。眉間のシワを伸ばしてやると今度は表情が悲しいものになった。




「この子、起きたら僕等にどんな態度取るのかな」




「....恐らく良いものではないだろう」




あからさまに落ち込む斎藤。
ああ、そういえば一くんは伊勢ちゃんに嫌われたくなくて誤魔化してたときがあったな。と沖田は思い出す。




「それどころか、起きる前に土方さんに殺されちゃったりして」




「ッ....!!」




「流石にそこまで鬼じゃねぇよ」




「あ、噂をすれば」




そりゃあ狭い空間で口にすれば筒抜けだろう。土方は大きなため息をついてから伊勢を見た。




よく見れば足は素足で傷ついている。
全身が濡れているので傘もさしてこなかったのだろう。




「胸騒ぎがして走って来たってとこか?」




「さぁ」




――この子の考えていることが僕に分かるわけないじゃないですか。




普段からも沖田にとって伊勢は全く思うようにいかない娘。そこらの者なら脅せばすぐに言うことを聞くのに。




なんて考えていればもう芹沢の亡骸は移動されたようで、藤堂と原田が血まみれになって戻ってきた。




「土方さん、その....伊勢は....」




藤堂がおずおずと土方に問う。
大方、伊勢の処遇についてだろうか。




「....平助、と斎藤と総司もか
お前らコイツの甘味処に通ってたんだっけな」




「はい....」