「離せ、あんたが汚れるぞ」




「いやぁ、私の方が汚いよ」




なんとか声を絞り出して発したそれは、あっさりと返されて私は風呂場に連れてこられた。

何をする気だと目を見開けば、みるみるうちに身ぐるみ剥がされ湯の中に突っ込まれた。




「ありゃ、女子だったのかい
すまなかったねぇ」




「別にいい」




昼間だというのに突っ込まれた湯は温かく今にも眠ってしまいそうな程だった。




「かじかむ手を時折温めたくて湯を張っておいたんだが、正解だったなぁ」




そう言いながら手拭いで優しく私の体を洗ってくれている。砂でカサカサになっている足には艶が戻った。




そこでふと疑問が浮かぶ。




「あの....店はいいのか....?」




先程見た限りでは甘味待ちの客もいた。
放置しておくなど店の信用に関わるのではないか。




私が問えば男....いや、老人と呼んだほうがしっくりくる。
老人はにっこりと微笑んだ。




「大丈夫だよ、ここは常連客が多いからね
皆が手伝ってくれてるだろう」




なんて言われてあんぐりと口を開ける。
客に店を任せるだなんて!よくここまでやってこれたな。




恐る恐る店の方へ耳を傾ければ変わらずお客さんの声で賑わっている。




人望の厚い老人なのかと、私は興味が湧いた。