時は遡って、嘉永六年




もう冬がそこまで来ているのだろう、
肌寒さを覚え私は自分の体を抱きしめる様にして歩いていた。




汚い身なり、鳴り止まぬ腹の音。
周りの者は私から少し離れて歩いていた。




「見てよ、あれ....」

「プッ....汚い」

「やめなさいよ、可哀想でしょう」




蔑んだ目で見る者、哀れみの目で見る者。どっちにしろ助けてくれないのだ、私には興味もなかった。




そうやって好奇の目で見続けられて山をいくつか越えた。
生きていられたのは奇跡だと言ってもいい。




この時代に一人で歩けば浪士に見つかり試し斬りをされて終わりだ。




そろそろ足が限界になりだした時、私は京にたどり着いた。
活気溢れる町はまるで私の存在などかき消すようで周りの者たちも私に気付くことなく通り過ぎていく。




少しだけ心が楽だった。