――これが、贈り物....?




巾着に視線を落とせば確かに少し刺繍が派手だ。色合いも女っぽいし芹沢さんが持っていると違和感が生じる。

だからこそ主人も覚えていたのだろう。




悪いとは思ったが巾着の紐を少しずつ緩めていく。恐る恐る中を覗けばそこには、




「紙と........、簪....?!」




文字が書かれた紙と簪が入っていた。
簪は、淡白なもので鮮やかな桔梗があしらわれている。




「綺麗....」




思わず口からため息が出るほど美しい品物だった。




「桔梗かい、確か花言葉は....変わらぬ愛」




「変わらぬ愛」




自分でもう一度口にした瞬間涙が溢れた。
もしかしたら、考え過ぎかもしれない

しかしこれはたとえ冷たい態度をとっていても、愛は変わらないと伝えているようなものだ。




もちろん愛といっても恋云々のものではない。




芹沢さんも、私のことを娘のように想ってくれていたのではないか。

そう考えずにはいられなかった。




「せ、りざわさ....」




視界が涙で歪みつつ、小さな紙を手に取る。




そこには丁寧かつどこか重みのある字がつづられていた。









雪霜に 色よく花の さきかけて
散りても後に 匂う梅の香









雪や霜に負けずほかの花に先駆けて
美しく咲いた梅の花は、散った後にも香を残すものだ。




「自分を梅に例えて....何を伝えたいの?」




肝心なところで意図が読めず、頭を抱える。
しばらくそうしていれば主人に「とりあえず買い出し頼んだよ」と言われたので後回しにすることにした。