「甘味処」と言う単語にその人は眉をピクリと動かす。




「もしかして、てめぇが総司の言ってた....」




沖田さんが私についてなにか話していたのだろうか....だが、沖田さんのことだ。
きっとロクでもないことを話したのだろう。すごく気になって口を開こうとした時。




「行くぞ、伊勢」




突然芹沢さんに手を引かれ、あっという間に道場の外へ連れ出されてしまった。
あの場を放置してよかったのだろうか。

そう思いつつも芹沢さんに必死でついて行った。




何処へ行くのかと思えば、着いた先は門の前だった。




「あの....」




「もう帰れ」




その声には怒気が含まれていて、
私はまた何かして怒らせてしまったのかと風呂敷をギュッと握りしめる。




なかなか帰らない私に芹沢さんは聞こえていなかったのか、とまた口を開く。




「今日は、もう帰れと言ったはずだ」




「!」




「今日は」その言葉に、私はまたここに来てもいいのかと喉まで出かかる。

よほど顔に出ていたのだろう、芹沢さんは吹き出した。




「フハハハハ!またいつでも来い
話相手ぐらいにはなってやらんこともないぞ」




「はい!」




上から目線なのが気になるが、私の楽しみが増えたので気にしないでおく。
店もあるので頻繁にとはいかない
けれど来てもいいのだ、これほど嬉しいことはない。




跳ねてしまいそうな程浮き足立っている自分をなんとか押さえ込み、踵を返して甘味処へと帰った。