*
それからどれくらい話をしただろうか
芹沢さんと私の考えや好きなものはとても似てるとは言えないのに何故か話が尽きなかった。
父親がいても、ここまで腹を割って話すことなどなかったかもしれない。
話題は、最近の壬生浪士組に対する世間の目についてになった。
「昨夜もお話しましたが
先日、襲われたそうですね」
「ああ、壬生の狼をよく思わん狸共の仕業だろう」
「このまま続けば、命を落とす方も現れるのですか」
「そうかもな」
「............」
私は、やはりこれは仕方のないことなのかと団子を頬張る。私の心情を察したのか芹沢さんは探るような目で見てきた。
「なんだ小娘、お前好いた者でもここにおるのか」
唐突に、そんなことを言い出すので私は団子が喉につまり盛大にむせた。
なんとか胸を叩いてゆっくりのみこみ息を整える。
「それは私に対する嫌味でしょうか」
きっとこの人は恋というものを知らない私を弄って楽しんでいるのだろうと思いながら懐紙で口周りを拭く。
「何のことだ」
――この様子ではその線はないか。
この歳なら愛だの恋だの色めき立っていもいいはずだがこの娘は違うらしい。
などと芹沢さんが考えていたことを私は知らない。
「仕方のない、ことなのでしょうか」
「何がだ」
「先日の事件を聞いて隊士の方たちの身を案じました、
しかしこの壬生浪士組に入った以上、死ぬ覚悟はできているだろうと知人から言われました
だから、心配など必要ないと」
「お前は見ず知らずの者に心配をするのか?」
芹沢さんの言葉に首を横に振る。
「見ず知らずの者ではありません
京の治安を守ってくださってます!
間接的だとしても私たちだって守られてます」
間接的、というのは
京の民を守るために動いていなくとも
治安を守るため悪事を働く浪士を取り押さえてくれれば商売も邪魔をされることもないし、
試し斬りなんて言う名目で殺される者もいなくなる。
「それに....沖田さんや藤堂さん、斎藤さんも時々甘味処に来てくださいますし
芹沢さんだって、せっかく仲良くなれたのに....」
私だって分かっている、これが子どもの我が儘のようなものだということは。
芹沢さんをチラリと見れば呆れた顔をしていた。
「すみません、我が儘ですよね」
「ああ、お前は変なところに欲があるようだのう」
「へんなところって....」
「普通の女子は色恋沙汰に欲がいく
ああそれから簪や綺麗な着物にな」
「はあ....」
「お前の言うことは間違ってはおらんが人が死ぬというのは運命だ」
「さだめ?」
「そうだ、人が死ぬのはきちんと生まれた時より日にちが決まっているらしい
我々はそれを知ることはできん....
だが、そのいつか来る死まで精一杯生き抜くことはできる」
「............」
「小娘、お前だって死ぬまで精一杯甘味処で尽くすつもりだろう?」
「それが、覚悟ということなのですか」
「そうなるな」
低くてとても胸に重く響いたその言葉に私は肩を落とした。
それからどれくらい話をしただろうか
芹沢さんと私の考えや好きなものはとても似てるとは言えないのに何故か話が尽きなかった。
父親がいても、ここまで腹を割って話すことなどなかったかもしれない。
話題は、最近の壬生浪士組に対する世間の目についてになった。
「昨夜もお話しましたが
先日、襲われたそうですね」
「ああ、壬生の狼をよく思わん狸共の仕業だろう」
「このまま続けば、命を落とす方も現れるのですか」
「そうかもな」
「............」
私は、やはりこれは仕方のないことなのかと団子を頬張る。私の心情を察したのか芹沢さんは探るような目で見てきた。
「なんだ小娘、お前好いた者でもここにおるのか」
唐突に、そんなことを言い出すので私は団子が喉につまり盛大にむせた。
なんとか胸を叩いてゆっくりのみこみ息を整える。
「それは私に対する嫌味でしょうか」
きっとこの人は恋というものを知らない私を弄って楽しんでいるのだろうと思いながら懐紙で口周りを拭く。
「何のことだ」
――この様子ではその線はないか。
この歳なら愛だの恋だの色めき立っていもいいはずだがこの娘は違うらしい。
などと芹沢さんが考えていたことを私は知らない。
「仕方のない、ことなのでしょうか」
「何がだ」
「先日の事件を聞いて隊士の方たちの身を案じました、
しかしこの壬生浪士組に入った以上、死ぬ覚悟はできているだろうと知人から言われました
だから、心配など必要ないと」
「お前は見ず知らずの者に心配をするのか?」
芹沢さんの言葉に首を横に振る。
「見ず知らずの者ではありません
京の治安を守ってくださってます!
間接的だとしても私たちだって守られてます」
間接的、というのは
京の民を守るために動いていなくとも
治安を守るため悪事を働く浪士を取り押さえてくれれば商売も邪魔をされることもないし、
試し斬りなんて言う名目で殺される者もいなくなる。
「それに....沖田さんや藤堂さん、斎藤さんも時々甘味処に来てくださいますし
芹沢さんだって、せっかく仲良くなれたのに....」
私だって分かっている、これが子どもの我が儘のようなものだということは。
芹沢さんをチラリと見れば呆れた顔をしていた。
「すみません、我が儘ですよね」
「ああ、お前は変なところに欲があるようだのう」
「へんなところって....」
「普通の女子は色恋沙汰に欲がいく
ああそれから簪や綺麗な着物にな」
「はあ....」
「お前の言うことは間違ってはおらんが人が死ぬというのは運命だ」
「さだめ?」
「そうだ、人が死ぬのはきちんと生まれた時より日にちが決まっているらしい
我々はそれを知ることはできん....
だが、そのいつか来る死まで精一杯生き抜くことはできる」
「............」
「小娘、お前だって死ぬまで精一杯甘味処で尽くすつもりだろう?」
「それが、覚悟ということなのですか」
「そうなるな」
低くてとても胸に重く響いたその言葉に私は肩を落とした。