「ちょっ、お母さん、違うのっ、これは…」
私が慌てて弁解するも、もう遅い。
お母さんはため息をついて、
「こういうことをするならホテルに行きなさいよ。」
と、なんとも勘違いしてることを言った。
いや、あながち勘違いでもないけどね?
確かに私が拒否しなかったらそうなってたかもしれないけどね?
でも、
「違うんだってば〜!」
また叫ぶ。
すると今度は西村君の手が私の口を塞いだ。
「彩、近所迷惑。学校行くよ。
では、また。」
そう言って西村君は私の口を塞いだままお母さんに会釈して学校へ向かった。
「西村君のバカ!
家の前であんなことしないでよ!」
学校に着き、西村君に怒る。
すると西村君はニヤリと笑って
「あんなことってなに?」
と聞いて来た。
「っ! 西村君のバカ! 大っ嫌いだもんね!」
私はもう怒ってるんだからね!
今さら謝られても許さないもん。
すると西村君は
「それは困るな。」
と言ってから私を後ろから抱きしめた。
「ちょっ、そんなことされても許さないし!」
「うん、許してよ?」
そう耳元で囁く西村君に鼓動が速くなる。
「俺は好きだよ。彩のこと。
例え、彩がいくら俺のことを嫌いって言ってもね。」
ドキドキドキドキーー
本当に心臓がうるさすぎて困る。
西村君に聞こえないか心配で。
「だって、彩は可愛くて、優しくて、責任感もあって、でもちょっと意地っ張りで、弱いくせに強がっちゃって…」
突然私について語り出した西村君。
耳元で囁かれるからよけいに恥ずかしい。
「西村君っ、分かったから! 許すよ!」
私がそう言うと西村君はクスッと笑ったあと、
「じゃあ俺のこと好き?」
と聞いてきた。
「好きだよっ! 大好きに決まってるじゃん…。
そんな簡単に嫌いになれるわけないじゃん!」
私がそう言うと今度は真っ正面から抱きしめてーー
「それは、反則だよ。彩。」
そう耳元で囁いた。
それにまた高鳴る鼓動。
ーー私は彼に夢中の様です。
あれから数ヶ月が経った。
今日は恋する女の子が、
気持ちを伝える日ーー
そう、バレンタインデー。
もちろん私も西村君にチョコを作った。
でも、なかなか渡せません。
そして、とうとう放課後になり私の家についてしまった。
「西村君、」
「彩、」
思い切って西村君を呼んだらなんと、
西村君の声とかぶってしまった。
「あ、ごめん。先にいいよ?」
私がそう言うと西村君も
「いや、お前からでいいよ。」
と言った。
じゃあ、お言葉に甘えてーー
鞄からチョコを出して西村君に押し付ける。
「はい。これ、チョ、チョコっ!」
渡すと西村君は受け取ってくれて、ニッコリ笑顔で、
「サンキュ。すげー嬉しいよ。」
と言った。
そして、西村君も鞄から何かを出した。
「はい。これ。誕生日プレゼント。」
そう言って、綺麗に包装紙に包まれたプレゼントをくれた。
「え? 今日って…」
「彩の誕生日だよ。忘れてたのか?」
ううん、忘れてはないよ。
でも、まさかーー
「西村君が覚えてくれてるとは思わなくて…」
私がそう言うと西村君はため息をついて
「バカ。俺がお前の誕生日を忘れるわけねーだろ。」
そう言って優しく微笑んだ。
その言葉に涙が溢れる。
「ありがとっ…西村君っ!」
すると西村君は最高の笑顔で、
「俺もありがと。」
と言った。
西村君が帰った後、部屋でプレゼントを開けてみる。
するとそこには、
「覚えててくれたんだ…」
前に一回だけ、これ欲しいな。と独り言で呟いたガラス細工のネックレスだった。
独り言なのに、聞いて覚えててくれたことが嬉しい。
「もうっ! これ以上、私を夢中にさせてどうするのよ…」
私は、そう1人呟いた。
大和 side
真っ赤な顔してチョコを渡してくる彩。
最初は何のことがわからなかった。
でも、確か今日、女子たちが俺に何かを渡そうとしてたっけ…。
まあ、俺は無視したけど。
その瞬間、思い出した。
あ、今日、バレンタインデーだっけ?
じゃあ、他の女子が渡そうとしてたのはチョコだったのか。
まあどうでもいいけど。甘いの嫌いだし。
でも、こいつのチョコはもらう。
だって、好きなやつが頑張って作ったチョコだぞ?
指に絆創膏までしちゃってさ。
可愛いすぎるだろ。
彩は、渡せたからか安心した様子だった。
彩も勇気を出したんだよな…。
そう考えたら俺が勇気を出さねえわけにはいかない。
そう思い、鞄をあさる。
そんな俺を不思議そうに見る彩。
そして、わざわざ包装してもらったプレゼントを出して彩に渡す。
「はい、これ。誕生日プレゼント。」
俺がそう言うけどポカーンとしてる彩。
なんだこいつ。自分の誕生日も覚えてねえのか?
まさか、俺の記憶違いとか…?
「え、今日って…。」
不安になりながらも
「今日、彩の誕生日だよ。
まさか、忘れてたのか?」
そう言うと彩はブンブンと首を振って、
「まさか、西村君が覚えてくれてるとは思わなくて…」
と言った。