一週間だけ付き合って


私がそう思いながら斜め後ろを歩いていると西村君が私の肩を抱き寄せた。



「うわっ。な、何?」




「なんで後ろ歩いてんの? 隣歩けよ。」




なんでって、そりゃあ



「私なんかが西村君の隣を歩いていいのかと思いまして。」





「いいに決まってるだろ。

ーーもし隣歩かなかったらキスする。」



そう言ってニヤリと笑う西村君は
悪魔にしか見えなかった。



って、私が怪我をした時に指の血を吸って顔を赤くしてた人とは思えないっ!



私は急いで隣へ行く。



しばらく歩きあと少しで私の家に着く。

「なあ、お前って可愛いよな。」



急にそんなことを言い出した西村君。



「へ? な、なにいってるの! 急に!」


一気に体温が上がる私。


「ほら、そうやって顔赤くなるところとかも。」



「んなっ! 西村君も顔赤かった!
私の血を吸った時。」



あの場面を思い出してますます顔が赤くなる私。



「お前バカ? あんなの演技に決まってるだろ。」



「え、私を騙したのーっ⁉︎」



「騙される方が悪い。」



そう言ってスタスタと歩き出す西村君。



「早く隣こいよ。キスするぞ。」



「あっ、待ってよ〜!」



そう言って私は隣に並ぶ。

「あ、ここが私の家だよ。」


「ふーん。それよりひとつ質問していい?」


「うん、なに?」


私が聞くと西村君はグッと近づいて



「お前男経験どんくらい?」


と言った。



「な、ないよ! 男経験なんてっ!
キスされたこともないし、…手とかも繋いだことない。」




「へえ、意外と純粋なんだ?
じゃあ俺が初彼ってわけか。」



「そ、そうなるね。」



すると西村君はニコッと笑って私の頭を撫でてから帰って行った。



ーーなんかカッコいいな。
まあ、イケメンだしねー。

それに苦手意識なくなったかも。

朝。


「彩、もう行く時間じゃないの?」


とお母さん。


ふふふ、お母さん私は彼氏と行くのです



とは言えなかった。



「迎えに来てくれるの。」



「あら、そうなの? マナちゃんと由佳ちゃんかしら?」




「えっとね、違『ピーンポーン』




インターホンが鳴った。



「あら、来たわね。開けてくるからはやく鞄を用意しなさい。」



「あ、お母さん待って…」



私の声は届かずお母さんは玄関を開けに行ってしまった。




私は急いで鞄を持って玄関へ向かう。



すると玄関を開けて西村君を見たお母さんは固まっていた。



「あの、お母さん…?」



私が呼ぶとお母さんは我に返って



「えっ? あ、えっと…どちら様?」


と言った。

西村君は

「え? 聞いてないんですか?」


と驚いていた。


「あ、お母さん、この人は西村君!
私を迎えに来てくれたの。」



「あ、そうなの? で、彼氏?」



お母さんが興味津々って感じで聞いてくる。



「……うん。」



私が答えるとお母さんは私の背中をバンバン叩いて



「なんで言わないのよ〜。こんなにイケメンの彼氏どうやったら捕まえられるのよ。」



「……。」



私が黙っていると西村君はお母さんに



「もう時間なので。」


と言って私の手を引いて歩いて行った。

「西村君、もう学校着くよ?」


「うん、校門見えるね。」


「手、離さないの?」


「なんで?」


「みんな見てるよ?」


「まあ、俺だからな。」


どんだけナルシストなのこいつ!


そんなことより、早く手を離して欲しい。

女子の視線が痛い…。
そしてその中には安田さんの姿も。


チラリと安田さんを見てみると安田さんは睨むようにしてこっちを見ていた。



ひー、怖っ!


私、いじめられたくないんだけど。


「に、西村君、私いじめられたくないんだけど。」



「あ? いじめられたいやつなんているのか? 俺もやだよ。」


そういうことじゃなくて!



そしてそのまま学校についてしまった。

教室へ行くといつも通りマナちゃんが抱きついてきた。


「彩ちゃん〜!おはよっ!」


「あはは、おはよう。」


由佳ちゃんは難しい顔をして、


「おはよ。安田、ものすごい顔で彩を睨んでるわよ。」



「あー、うん。西村君と一緒に登校してるところ見られちゃったんだよね。」



私が朝のことを説明すると由佳ちゃんは
盛大なため息をついた。


「うわー、マジ? それヤバイよね。」


マナちゃんは困ったような顔で


「安田さんには気をつけてね。」


と言った。


私は


「うん、2人とも心配無用だよ。」



と言うのが精一杯だった。

お昼休み。



「藤本さん、ちょっといい?」



マナちゃんたちとお弁当を食べていると突然安田さんに話しかけられた。
周りには取り巻きがたくさん。


由佳ちゃんは


「ダメよ。今彩は私たちとお弁当食べてるのよ。」



マナちゃんは


「そうそう。それに、用件ならここで済ませてよ。」



と言ってくれた。



安田さんは構わずに私の腕を引っ張って



「あらでも、藤本さんはもうお弁当食べ終わってるわよね。
本当にすぐ終わるから借りるわよ。」



と言って私をどこかへ連れてった。

立ち入り禁止の女子トイレに連れてかれた私。

安田さんは私を冷たい視線で見て


「西村君とどういう関係?」


と聞いた。


私は負けずに


「安田さんに関係ないわ。

まあ、でも教えてあげる。
私達は付き合ってるの。」



ちょっと性格悪い子っぽく言って見た。
まあでも本当のことだしね。


「じゃあ別れてよ。」


予想通りの言葉が聞こえた。


「嫌。あなたに指図される覚えはないわ。」



私がそう言うと安田さんは



「別れろって言ったら素直に分かれなさいよ!」



と言ってやはり、予想通りのビンタ。


うぅ、痛いなあ。ほっぺがヒリヒリするよ。


「なにするの? 痛いんだけど。」


こう見えて私は気が強いんだ。
ここで泣くような女じゃないの。