別にいいのだった。


 無欲さが、俺の取柄とも言えるのだから……。


 確かに普段からそうだった。


 興味があるのは、剣道とサスペンスドラマ、それに推理小説ぐらいだ。


 俗欲の類はほとんどない。


 そんな人間だった。


 その日も署に着き、島田と顔を合わせて、


「おはよう、シマさん」


 と挨拶する。


「ああ、トノさん、おはよう」


 島田がそう言って、パソコンを開き、業務を始めていた。


 この男も年中働き詰めだ。


 そう思い、パソコンの電源ボタンを押して、起動する合間にコーヒーを淹れる。