「英一郎さんたち満州にいた将兵は、終戦して、ソ連軍に武装解除されて、


捕虜となり、満州からシベリアへ強制連行されたのだって。


それで、その高橋さんは、4年の抑留生活に耐え、ようやく帰国を許され、


帰国を許されなかった英一郎さんに言付けを頼まれたとの事で


私の元を尋ねてくださったの。



”あなたたちのことをシベリアの地からいつも想っている。


しかし、あらぬ容疑をかけられ、自分はいつ帰られるとも分からない。


生きて帰れるかも分からない。


他の男と再婚してくれ”



って。私はその場で泣き崩れたわ・・。


それからまもなくして、英一郎さんが亡くなったって通知が届いた。


だけど、遺骨も戻って来ないし、私は、英一郎さんは必ず生きて帰るって


信じて、今日まで生きてきた。」




祖母の脳裏に当時の様子が生々しく蘇っているのであろう。

号泣しながら話を続ける祖母に、私は、かける言葉もなく、ただ一生懸命に話を聞くことしか出来なかった。