「英一郎さんが出征してから8ヵ月過ぎた昭和20年8月15日、


日本は無条件降伏して、戦争は終わった。


それから10日後、英和が生まれた。


英一郎さんに手紙を出したけど、返事はなかった。


検閲も厳しかったし、没収されてたのかもね・・


だけど、私は、何とか働いて英和と二人で英一郎さんの帰りを待っていた。




・・気がつけば、終戦から4年の月日が経っていたよ。


ある日、一人の兵士が家を尋ねて来てね・・


その方、高橋さんって言って、シベリアから帰還された抑留兵で、


シベリアで英一郎さんと同じ収容所におられた方だったのよ。」




60年前の出来事を昨日の事のように話す祖母。


祖母の中で、戦争はまだ終わっていないのだ。


私は、溢れ出す涙も拭かずに祖母の話に耳を傾けていた。