でも、仕方ないんだーーー



自分に断りをいれ
車のドアの閉まる音を聞く。


キーケースをポケットにいれ
目の前の咲き乱れる桜に
視線を移す。



ぼんやり浮き上がる大樹が
いつみても幻想的でーーー


特に今夜は、
淡い桃色が
月光に浮いていて



すこしばかり、ゾクゾクする。




そのとき

風が動いた






目の前の花吹雪に

目を凝らせば







ーーーいたーーー


やっと見つけたーーー




俺は、走り出す。



革靴が少し滑るけど



気にせず、全速力で
駆け出した。