今さら、どうしようもない。
この時代に、
まだ門扉がないなんて事にも
少々驚きながら
せっかく来たのだからと
校庭に足を踏み入れ
校舎までの土肌むき出しの
長い道を歩き始める。
遠くに等間隔に並ぶ外灯と
オレンジに輝く満月が
満開の桜を浮かび上がらせる。
ひらひら
ひらひら
見渡す限りの桜の大海
音もなく散りゆく桜が
私を取り巻いていて
ほら、やっぱり目眩がした。
どちらから来たのか
どちらへ進むのか
わからなくなって
散り積もった桃色の海に
立ちすくむ。
その時
風が動いたーーー
ざあああーーーー
そんな、音をたてて
敷き詰められた花びらが
一斉に舞い上がった。