ざぁっと一瞬強い風が吹き、暑い日差しのせいで額を伝っていた汗が、少し乾くような気がした。

…くれって、…何が…?

わたしの…命…が?

何がなんだかわからない。

ただ、言葉自体は理解しているのに、文章の意味がさっぱりわからなかった。

わたしはただただ目の前でどこか悲しげに微笑む少年の姿を見ていることしかできなかった。

「…っ」

なにか言い返そうと思っても言葉がでてこない。

睨むことも、息を吸うことさえも、全部が全部忘れてしまいそうだ。

そんなことを考えているうちに、彼はいつの間にか腕から手を離し、数メートル先でわたしに手招きをしていた。

もうなにも考えられない。

わたしの足は、無意識に、足の進むままに…彼のもとへ歩みよっていた。