わたしは母を布団に運ぼうとは思わなかった。

酒を呑んで男と遊ぶばかりの生活を送っている人に世話をやくほどわたしは親切ではない。

長い間わたしを一人にさせてたのだから、当然だ。

でも、さすがに何もかけないで寝ると風邪をひきそうだったから、押し入れから適当なタオルケットを引っ張りだし、そっと母の昔から変わらない華奢な背中に覆い被せた。

わたしも、少し早いけど寝ることにした。

自分の部屋に行き、狭い床に布団を敷いて寝転がる。

しかし、しばらく目をつぶっていても、眠れるどころか目は冴えまくる一方だった。

母の事ばかりが頭の中をグルグルグルグルと渦巻く。

わたしはふいに起き上がり、机の上に伏せてる写真立てを手にとる。

そこには小さい頃のわたしと、お母さんとお父さんが写っていて、三人とも…笑ってた。

また三人で笑い合えないんだ。

もう一度、爽やかに笑いながら、二人に"光!!"って、呼んでほしいよ…。

想いがこみ上げ、我慢ならなくなったわたしは、机の中の睡眠薬をひと粒口に放り込んだ。