ふいに左腕に変な感覚を覚えた。

と同時に、投げ出したはずのわたしの足は未だに屋上ギリギリのところでとまっている。

…なんで?

「キミ、何してんの」

急に後ろから声が降ってきたのでビクッと体が反応した。

低くて、落ち着いた、男の子の声だった。

どうやら彼がわたしの左腕を掴んでいるらしい。

わたしはその声につられて振り向きそうになるのを堪える。

だって、ここで振り向いたら負けてしまう。

せっかく死ぬって決意したんだから、ここまで来て止められてたまるもんですか。

彼の手を振りほどくことも考えたが、強く掴まれているせいで簡単には振りほどけそうになかった。

「今、死のうとしてたでしょ。」

…最悪だ。

この屋上はわたししか知らないと思ってたのに、まさか他に知ってる人がいるなんて。

しかも、こんなところを見られるなんて…。

すると彼はまるでわたしの心を読んだかのように、くつくつと笑い、こう続けた。

「残念だったな。屋上のドアの鍵、壊れてんの俺も知ってたんだよね。」

そのいたずらっ子のような口調は、わたしをますます苛立たせる。

「とっ止めないでよ!!!!わたしを死なせて!!」

精一杯歯向かった。

…つもりだったのに、彼の口調は変わらず、人が死ぬのを止めない人なんていないでしょ。と言った。