…わたしは知っていた。



立入禁止になっている屋上のドアの鍵が、壊れていることを。

おそらくそれを知っているのはわたしだけだと思う。

わたしは授業こそ真面目に受けていたが、それ以外はずっと屋上にいた。

10分休みも、昼休みも、放課後も。

しかし屋上にわたし以外の人がはいってくることはなかった。

わたしをいじめる人さえ、気づいていなかった。

屋上が安全だとわかって以来、いじめられそうになったり、いじめられたりしたあとにはきまって屋上で空を眺めていた。

屋上が、唯一の心の拠り所だったのだ。

だから、終わる時も、屋上で。



そう思った。


もう迷いはない。

決めたんだ。

もう、誰も止められない。

わたしは躊躇わず、屋上に足を進めた。