夏休みの校舎はひどく静かだった。

耳に入るのは吹奏楽部の軽快なメロディーと野球部の掛け声、そしてけたたましいセミのなきごえだけだ

誰もいない廊下にわたしのペタペタという足音だけが響き渡る。

いつも賑やかな声が聞こえるこの廊下が静かなのは少し変な感じがする。

静かなのが苦手なわけじゃない。

むしろ好きな方だ。

夏休みに入る直前まで悲惨ないじめを受けていたわたしは1人でいるのなんて、もう慣れっこだった。

でもそのおかげ私の今の格好は、制服のカッターシャツと靴下だけという、実に高校生のイメージとはかけ離れていた。

しかもただの制服と靴下ではない。

上履きは隠されたまま見つからず、トイレの水をかけられたり蹴られたりした制服はボロボロだ。
本来ならしなければならない青いネクタイも、名札も校章もほとんど身につけていない。

普段なら絶対生徒指導の先生に捕まるのだが、今は夏休み。
先生の数は格段に減っているから心配はない。

まぁ、今更捕まって制服の指導をされたところで関係ないのだけど。




だって




もうすぐ、全て終わるんだから。